著者
横畠 徳太 高橋 潔 江守 正多 仁科 一哉 田中 克政 井芹 慶彦 本田 靖 木口 雅司 鼎 信次郎 岡本 章子 岩崎 茜 前田 和 沖 大幹
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.214-230, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
45
被引用文献数
1

パリ協定における目標を達成するために脱炭素社会を実現し,今後も変化する気候に社会が適応するためには,多くの人々が気候変動のリスクに関して理解を深めることが重要な課題である。このため我々の研究グループは,これまでに気候変動リスク連鎖を包括的に分かりやすく可視化する手法の開発を行った。本論文では,我々が開発した手法によって得られた,水資源・食料・エネルギー・産業とインフラ・自然生態系・災害と安全保障・健康の7つの分野に関連するリスク連鎖の可視化結果(ネットワーク図・フローチャート)について議論することにより,気候リスク連鎖の全体像を明らかにする。また,可視化結果を利用して行った市民対話イベントの実例を紹介することにより,我々の開発したネットワーク図・フローチャートの有用性や,気候リスクに関する市民対話の重要性について論じる。さらに,日本における気候変動リスク評価の概要について紹介し,気候変動リスク連鎖を評価するための今後の課題について議論する。
著者
佐藤 秀樹 前田 正治 小林 智之 竹林 唯
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
pp.211104167, (Released:2022-08-30)
参考文献数
29

This study used text mining and examined workers’ psychosocial burdens caused by the COVID-19 pandemic. Employees in the Fukushima Branch of the Japanese Trade Union Confederation (RENGO Fukushima) and related workplaces responded to a web-based questionnaire survey. The survey inquired about psychosocial burdens caused by COVID-19, and the participants responded using a free-text format. We analyzed the responses of 215 respondents. Logistic regression analysis indicated a stronger association between female workers and severe psychological distress than male workers. In addition, correspondence analysis showed that workers with severe psychological distress used more words related to “income” and more first-personal pronouns such as “I” or “we.” In contrast, women with college-age children used more words related to “online college courses,” “burdens,” and “anxiety.” These results suggest that female workers with children experience significant stresses associated with their children, and workers with severe psychological distress experience psychosocial burdens related to their income.
著者
前川 芳秀 津田 良夫 沢辺 京子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-12, 2016-03-25 (Released:2016-09-25)
参考文献数
41
被引用文献数
7 12

A nationwide survey of mosquito distribution in Japan was carried out in 2013 and 2014, in order to determine the current distribution of vector mosquitoes. Forty-two study sites located either in coastal or inland areas were selected from Hokkaido to Kyushu, and mosquitos were collected using CDC-like traps with 1 kg of dry ice (dry ice traps), a sweeping net and a dipper for collecting larvae. Ten dry ice traps were operated at each study site for 3 or 4 days. Larvae were collected from various bodies of water and carried to the laboratory, where they were reared until adult for species identification. The locations of the trap and larval collection sites were recorded using GPS. A total of 16,608 mosquitoes of 44 species and 11 genera were collected in this study. Adult density ranged between 0.002 and 16.51 adults/trap night among the 34 species collected by the dry ice traps. The geographical and altitudinal distributions of the mosquito species were compared. Culex tritaeniorhynchus, Cx. pipiens group, Aedes albopictus, and Cx. orientalis were distributed widely and with a relatively high density of >2 adults/trap night, suggesting that these species are of high medical importance. In Hokkaido Ae. excrucians, Culiseta nipponica, and Ae. punctor/communis were collected at relatively high densities ranging between 0.51 and 1.98 adults/trap night, and are thus considered a locally abundant species.
著者
加藤 泰史 小松 香織 前川 健一 松田 純 宇佐美 公生 石川 健治 竹下 悦子 上原 麻有子 清水 正之 齋藤 純一 松井 佳子 後藤 玲子 小倉 紀蔵 村上 祐子 中村 元哉 小島 毅 品川 哲彦 水野 邦彦 林 香里
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

平成30年度の研究計画にもとづき、8月に一橋大学で分担者および協力者(国内)と研究打ち合わせを行い、平成30年度の計画を確認すると同時に、分担者の村上祐子氏が研究発表を行った。また、分担者および協力者の何人かに、『思想』2019年3月号および4月号の特集で研究成果の一部を発表してもらうように再度依頼して確認した。なお、代表者の加藤は8月にWCP北京大会に参加してプレゼンテーションを行った。10月に代表者が渡独してシェーンリッヒ教授(ドレスデン工科大学)らと論文集の編集およびそれに関連した国際ワークショップ企画に関して打ち合わせを行うとともに、11月に一橋大学で網谷壮介氏(立教大学)らを招聘して概念史的研究の一環である「第7回スピノザ・コネクション」を開催した。12月に東京大学で、非欧米圏担当の分担者および協力者と研究打ち合わせを行うと同時に、金光来研究員(東京大学)の講演会を行った。平成31年1月に代表者が、10月に一橋大学で開催予定の国際ワークショップの企画および論文集編集の件で再度渡独し、クヴァンテ教授(ミュンスター大学)・ポルマン教授(ベルリン・AS大学)らと研究打ち合わせを行うと同時に、シェーンリッヒ教授の主催する研究会に参加した。3月に京都大学で、科研費のワークショップを開催し、代表者の加藤と分担者の小島・小倉両氏が研究発表を行い、またニーゼン教授(ハンブルク大学)・マリクス准教授(オスロ大学)・バーデン教授(イリノイ大学)・デルジオルジ教授(エセックス大学)を招聘して一橋大学で国際ワークショップと、さらに手代木陽教授(神戸高専)らを招聘して「第8回スピノザ・コネクション」を開催すると同時に、『ドイツ応用倫理学研究』第8号を刊行するとともに、科研費のHPも完成させた(http://www.soc.hit-u.ac.jp/~kato_yasushi/)。
著者
三沢 岳志 今井 雅子 井本 美子 前田 耕一 矢部 悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.74-79, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

本研究は自転車部品業界で世界トップ企業のS社を選び,その知的財産戦略を明らかにすることを目的にした。S社は自転車部品業界で世界的に圧倒的なシェアを持つことと,自転車部品の組み合わせであるコンポーネントは独自のものを提供しながら,その外部インターフェースは公開されていることから「自転車界のインテル」と言われている。しかし調査するとビジネスモデルも知財戦略もインテル社とは異なる。また,自転車業界がEバイクに急速に移行する中,S社は後発でありながら,Eバイクのコンポーネントでも一定のシェアを確保している。そこでS社の自転車部品におけるトップシェア獲得と,Eバイク市場への参入における知財戦略の研究を行った。
著者
稲次 基希 前原 健寿
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.986-993, 2021-09-10

Point・頭部外傷後1週間以内の早期発作は急性症候性発作であっててんかんではなく,1週間以降の晩期発作を認めたものがてんかんとして扱われる.・急性期の抗てんかん薬の予防投与は推奨されているが,慢性期の予防投与は否定されている.・てんかん重積状態は予後を悪化させるため,積極的な診断・治療が必要である.特に非けいれん性てんかん重積では持続脳波モニタリングが有用である.
著者
前多 裕介 別府 航早
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.013-018, 2020 (Released:2020-01-25)
参考文献数
25

Collective motion organized by autonomous motile elements is ubiquitous across scales, from motor proteins, flagellated sperms, to animals and fishes. Such motile materials are called active matter, and collective dynamics of active matter attracts broad interest from physics and biology due to their potential in exploiting universal feature of ordered structure and dynamics in biological systems. Here, we describe collective ordered phase of bacterial vortices under confinement with designed geometries. The transition of ordered vortices can be controlled by geometric rule derived from Vicsek-style model. This finding may bring design principle of collective ordered phase of confined self-propelled particles.
著者
烏谷 竜哉 黒木 俊郎 大谷 勝実 山口 誠一 佐々木 美江 齊藤 志保子 藤田 雅弘 杉山 寛治 中嶋 洋 村上 光一 田栗 利紹 藏元 強 倉 文明 八木田 健司 泉山 信司 前川 純子 山崎 利雄 縣 邦雄 井上 博雄
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.36-44, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

2005 年6 月~2006 年12 月の期間,全国の循環系を持たない掛け流し式温泉182 施設を対象に,レジオネラ属菌等の病原微生物汚染調査を行い,29.5%(119/403)の試料からレジオネラ属菌を検出した.採取地点別の検出率は浴槽が39.4%と最も高く,貯湯槽23.8%,湯口22.3%,源泉8.3%と続いた.陽性試料の平均菌数(幾何平均値)は66CFU/100mL で,採取地点による有意差は認められなかったが,菌数の最高値は源泉,貯湯槽,湯口でそれぞれ180,670,4,000CFU/100mL と増加し,浴槽では6,800CFU/100mL に達した.陽性試料の84.7%からLegionella pneumophila が分離され,血清群(SG)別ではSG 1,5,6 がそれぞれ22,21,22%と同程度の検出率であった.レジオネラ属菌の汚染に関与する構造設備及び保守管理の特徴を明らかにするため,浴槽と湯口上流側とに分けて,多重ロジスティック回帰分析を行った.浴槽での汚染リスクは,湯口水がレジオネラに汚染されている場合(OR=6.98,95%CI=2.14~22.8)及び浴槽容量が5m3 以上の場合(OR=2.74,95%CI=1.28~5.89)に高く,pH 6.0未満(OR=0.12,95%CI=0.02~0.63)では低下した.同様に,湯口上流ではpH 6.0未満(OR=0.06,95%CI=0.01~0.48)及び55℃以上(OR=0.10,95%CI=0.01~0.77)でレジオネラ汚染を抑制した.レジオネラ属菌以外の病原微生物として抗酸菌,大腸菌,緑膿菌及び黄色ブドウ球菌を検査し,汚染の実態を明らかにした.
著者
山崎 静子 石賀 裕明 道前 香緒里 東 直子 Faruque Ahmed 三瓶 良和 Hamidur Rahman Badrul Islam
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-93, 2000-03-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
3

1999年にバングラデシュのシャムタ村と東となりのデウリ村で18本のボーリングによって採集した堆積物試料(パーカッションリバースサーキュレーション工法による,一本の深さは約15m)をもちいて,地下水ヒ素汚染のメカニズムを解明するために,主元素,微量元素および全有機炭素,窒素,イオウの定量を行った.デウリ村の有機質泥ではAsが50ppmを超えるものがあり,ピート層では262ppmに達する.これらはシャムタ村の一般的な泥質試料(As=20ppm)に比べ高い値を示す.As濃度はVやCuの濃度と良い相関をもち,有機物の濃縮に関係する.P_2O_5も地表の試料で高いものがあり,人間活動に関連するといえる.試料のいくつかからはイオウが検出され,海成や汽水環境で堆積したことを示唆する.しかし,TS/TOC比は一般の海成層の値(0.36)よりも低く,淡水もしくは汽水環境で堆積した可能性がある.TOC/TN=9.2〜14.2(平均値11.1)であり,プランクトンおよび高等植物の両者に起源すると判断される.有機物に関連する高濃度のヒ素は帯水層での還元的環境下で地下水汚染を引き起こすと考えられる.農業や家庭排水の増加に伴って有機物の分解は促進され,堆積物,特にピート層からのヒ素溶出の速度を増していると考えられる.
著者
前田 ケイ
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.23-28, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

本稿ではSST(social skills training)の実施を集団で行う場合、集団のもつ潜在的な治療教育的力動を生かしつつ、参加メンバーの行動学習を効果的に助けるために、どのような工夫ができるかを具体的に論じた。SSTは幅広い利用者に対して有効な方法であるが、ここではおもに精神障害者のSSTについて述べた。精神障害者のSSTは医師、看護師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士など、多職種が行っているので、ここではそのような人々を総称して「スタッフ」とよんだ。SSTにはいろいろな進め方があるが、本稿で紹介するのは基本訓練モデルとよばれる方法である。基本訓練モデルによる指導過程のうち、特に「学習に適切な環境をつくる段階」と「学習を効果的に進める段階」の2つに焦点を絞って、いくつかの集団技法について論じた。
著者
大島 祥央 浦辺 幸夫 前田 慶明 河原 大陸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.199-202, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

〔目的〕林業従事者の転倒災害防止の一助とするためにチェンソーの駆動が立位バランス能力におよぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常成人男性12名とした.〔方法〕安静時とチェンソー把持直後,5分後,10分後の静的・動的立位バランス能力(足圧中心の単位軌跡長,外周面積,重心前方移動距離)を平衡機能計で測定した.チェンソーの把持はエンジンを駆動しない非駆動条件と,エンジンを駆動する駆動条件に分けた.〔結果〕足圧中心の単位軌跡長と外周面積は,チェンソー把持前後で両条件とも有意な変化はなかった.重心前方移動距離は,駆動条件のみ安静時と比較してチェンソー把持直後,5分後でそれぞれ有意に低下した.〔結語〕本研究は,チェンソーを駆動させることで,即時的に立位バランス能力が低下する可能性が示唆された.
著者
山本 詩織 秋元 真一郎 迫井 千晶 山田 研 壁谷 英則 杉山 広 髙井 伸二 前田 健 朝倉 宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.77-82, 2022-06-30 (Released:2022-07-07)
参考文献数
24

This study examined the thermal kinetics in wild deer and wild boar meats by low temperature cooking process as well as its bactericidal effect. The thermal processing so as to heat the inner-core of the samples at 65℃ for 15 min, 68℃ for 5 min, 75℃ for 1 min in steam convection oven exhibited faster elevation rate of the internal temperature of wild deer meat than wild boar meat, while their sterilization values after the thermal processes were estimated to be almost equal. Naturally contaminated fecal indicator bacteria were not recovered from all samples after the above-mentioned processing. Spike experiment resulted that approximately 6.6–7.8 log CFU/g of STEC O157 and/or Salmonella spp. were not recovered from the wild deer meats after the three types of thermal cooking. Thus, these data indicated aptitude of these low temperature cooking conditions to minimize the microbiological risks in the game meat.
著者
川端 康弘 梶野 瑞王 財前 祐二 足立 光司 田中 泰宙 清野 直子
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.5-12, 2021 (Released:2021-02-28)
参考文献数
53

Visibility is important information not only for meteorological analysis but also for operations of transport and monitoring air pollution. In this study, climatological features of visibility in the Tokyo urban area are investigated. The number of days with low visibility decreases year by year. The factors can be drying in urban areas and the improvement of air quality, and the reduction of suspended particle matters contributes more to improve the visibility than the relative humidity. The visibility shows seasonal changes; during summer, visibility decreases when photochemical smog is likely to occur, whereas the visibility increases in winter. Visibility in Tokyo can be largely affected by anthropogenic hygroscopic aerosols, which decrease visibility when relative humidity is high.