著者
橋本 誠志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.128, pp.91-98, 2006-11-30

ネットワーク上に個人データが流出した場合、司法手続による救済は本質上手続終結に長時間を要する。このデジタル情報の即時流通性との間のタイムラグにより、データの2次流出が発生し、手続中に被害が拡大し、今後その役割を十分に果たしえなくなることが考えられる。この問題への対応として、筆者は自動実行型代替的紛争処理(ADR)機能を有する電子的自力救済型個人データ保護制度の設計を試みてきた。本稿では、特に制度運営のための制度参加者の費用負担方法を検討する。These days, it is difficult for the present judicial system to play a part as a main framework for relief of privacy infringement due to serious time lag problems between strict judicial procedures and instantaneous data circulation on the network. The author has architected a remedy system, using an electronic self-help approach, against deteriorations to privacy infringement in the trouble of occurrence of personal data leak on the Internet. This paper suggests user's cost responsibility for this system.
著者
木本 喜美子 笹谷 春美 千葉 悦子 高橋 準 宮下 さおり 中澤 高志 駒川 智子 橋本 健二 橋本 健二 萩原 久美子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、長期雇用、年功賃金などの日本的雇用慣行が適用される「男性職」とは区別される形で、いかにして「女性職」が形成されてきたのかを探ることを通じて、女性労働史を再構成することを目的としている。そのために、女性労働の集積地域である福島県北・川俣町の織物産業に従事した女性労働者を調査対象としてとりあげ、そのライフヒストリー分析を軸に、雇用労働と家族生活とがどのように接合されてきたのかを明らかにした。
著者
徳永 幹雄 川崎 晃一 上園 慶子 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.107-120, 1989-03-31

一般公募によって応募された軽症高血圧者11名を対象に, 講義と実技を組み合わせたテニス教室を3カ月間に26回(週2回, 1回90分)実施した。本教室の開始時と終了時に身体面, 医学面.心理面, 生活面から諸検査を実施し, その変化を分析した。得られたおもな結果は, 次のとおりである。1. 身体面では皮下脂肪厚(肩胛骨下部), 体脂肪率の減少と柔軟性の向上が認められた。その他筋力, 瞬発力, バランス, 全身持久性は顕著とはいえないが, 向上傾向がみられた。1日の平均歩行数から活動量をみると, 月別では1.20倍, 曜日別では本教室の実施日は他の曜日の1.41倍に増加し, 1日平均の活動量の増加が認められた。自転車エルゴメーターによる運動負荷時の血圧・脈拍はテニス教室の開始時と終了時で顕著な差は認められなかった。携帯型連続血圧測定装置で測定した運動中の血圧・脈拍の反応は, 高齢者では中年者に比べ血圧が上昇しやすく, また女性は男性より脈拍が早くなった。2. 医学面では血圧に対する作用は有意ではなかったが, 前報告と同様に, 腎機能・肝機能・糖・脂質代謝の指標となる血中変数は著明な改善を示した。また副腎皮質ホルモンであるコーチゾールも有意に増加した。3. 心理面では日常生活での不安, 血圧に対する不安, 競技に対する不安のいずれも減少し, 血圧の自己評価でも45.4%(5名)が下降したことを認め, 不安傾向が減少したものと思われる。健康度検査では身体的愁訴の減少が認められ, 全体的には精神的健康の評価が高くなった。スポーツ行動診断検査では肥満傾向の減少が認められたが, その他には顕著な差は認められなかった。4. 日常生活の変化の評価では便通, 睡眠, 食欲, 健康, 体力ヘの自信, からだの動きについて6〜7割がよくなったことを認めた。また, 精神的安定度, 生活の活気・楽しさでは8割がよくなったことを認め, 家族の励ましや協力のもとに教室への参加が継続されたことが認められた。5. テニス教室への評価では指導のしかた, グループ内の雰囲気や対話に好意的態度がみられ, 「楽しかった」と全員が回答した。ただ, 技術の進展と共に恥ずかしい思いや嫌な思いが若干みられ, 課題が残されるが, 全体的には好意的評価が得られた。
著者
橋本 隆
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

γチューブリン環状複合体gTuRCは酵母、動物から植物まで保存されており、γチューブリン2分子とGRIPモチーフをもつGamma-tubulin Complex Protein 2(GCP2)とGCP3それぞれ1分子ずつから成るキャップサブユニット小複合体とさらにGCP4,GCP5,GCP6,GCP-WD(NEDD1)が追加された環状複合体が存在する。我々はアラビドプシスのGCP2とGCP3に蛍光タンパク質を融合させてゲノム制御領域を用いてmCherry-TUB6微小管標識アラビドプシス植物体で発現させ、微小管重合開始点をin vivoイメージングした。大部分のgTuRCは表層微小管上に出現する。そのうち約半分のgTuRCは短時間(5秒以内)に消えるが、残りの約半分は微小管上に出現してから5秒以内に新たな微小管を形成する。新生微小管の6-7割は約40度の角度で伸長するが、それ以外は既存の微小管に沿って伸長し、束化が起こる。カタニン変異株ではgTuRCは重合開始点に留まり、新生微小管が既存の微小管から切り離されることはなかった。従って、カタニンがgTuRCと新生微小管のマイナス端の間付近の構造を認識して、表層微小管の重合開始点からの切り離しを行っていると推測される。アラビドプシスにはEB1a,EB1b,EB1cの3種類のEB1があるが、EB1a,bは主に間期の微小管に局在し、EB1cは核内に局在し分裂期の微小管の機能を制御している。eblc変異株では紡錘体微小管とフラグモプラストの配向が乱れており、微小管薬剤に対して高感受性を示す。EB1cの分裂期微小管制御機能にはその特徴的なC末端が必須であり、EB1a,bでは代替できなかった。
著者
鈴木 厚人 井上 邦雄 末包 文彦 白井 淳平 古賀 真之 斎官 清四郎 山口 晃 阿部 浩也 吉村 太彦 橋本 治
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1997

研究代表者が率いるカムランド実験は,中核的研究拠点形成プログラムの支援(平成9年度〜平成15年度)を得て,平成13年度に1000トン液体シンチレータニュートリノ/反ニュートリノ観測装置を神岡鉱山の地下に完成させた。そして,平成14年1月よりデータ収集を開始し,現在継続中である。この間,平成14年12月に,原子力発電所の原子炉から生成される反電子ニュートリノ(原子炉起源)の消失現象を世界で初めて検出した。この現象は,ニュートリノが質量を持つことに起因するニュートリノ振動を強く示唆し,その証拠は次の論文(平成16年7月予定)で公表する予定である。また,原子炉反電子ニュートリノ消失現象の発見に関する論文(Phys.Rev.Lett.90,021802,2003)は,現在までに被引用数537となっており、Thomson ISI Web of Scienceデータに基づくScience Watch誌の最新号(March/April,2004)では本論文は月間被引用数で物理学分野の世界第1位、医学、化学、生命科学・物理学を合わせた総合順位でも世界第2位となっている。本研究では,反電子ニュートリノスペクトルにおけるウラン及びトリウム・ピークの同定による地球反ニュートリノ検出の挑戦も行なわれた。これまでの実験で検出器の充分な性能が示され、世界初の検出が期待されている。実現すれば地球内部のウランやトリウムの存在量、ウラン/トリウム比の測定など地球内部のエネルギー生成機構や地球進化史の解明に不可欠の情報が期待される。また検出器を更に高感度化し^7Be太陽ニュートリノの未曾有の高感度測定を目指した研究が進行中である。
著者
吉田 健一 橋本 光靖 伊藤 由佳理 渡辺 敬一 坂内 健一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.ヒルベルト・クンツ重複度の下限について研究代表者と渡辺敬一(分担者)は本研究に先立ち、ヒルベルト・クンツ重複度が1の局所環が正則局所環であることを証明した。この結果は正標数において、永田による古典的な結果を拡張したものになっている。本研究では正則でない局所環に対するヒルベルト・クンツ重複度の下限を求める問題について考察した。結果として、平方和で定義される超平面の場合に下限を取るという予想を得て、4次元以下の場合にそれを証明した。本結果における最小値は(代数幾何学的にも)大変興味深いものであるが、現在の所それをサポートする理論は得られていない。このような理論を見出すことは今後の研究課題である。また、我々の予想は完全交叉の場合にエネスク・島本により証明された。2.極小ヒルベルト・クンツ重複度の理論極小ヒルベルト・クンツ重複度はF正則局所環の不変量として導入した概念である。この量は0と1の間の実数値を取りうるが、アーベルバッハらの研究により、F正則であることと、極小ヒルベルト・クンツ重複度が正の値を取ることが同値であることが知られている。本研究においては、F正則環の代表的なクラスである、アフィントーリック特異点と商特異点の場合にその値を求めた。3.極小重複度を持っブックスバウムスタンレー・リースナー環の特徴付け研究代表者は佐賀大学の寺井直樹氏の協力に基づき、ブックスバウムスタンレー・リースナー環の極小自由分解、重複度、h列などに関する研究を行った。特に、そのようなクラスにおける重複度の下限を決定し、下限を取るスタンレー・リースナー環の特徴付けを行った。
著者
丹治 光浩 橋本 和明 安藤 治 東 牧子 小川 恭子 Mitsuhiro TANJI HASHIMOTO Kazuaki ANDO Osamu AZUMA Makiko OGAWA Kyoko 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.43-51,

心理療法における失敗を論じる意義は大きいが、それが正面から取り上げられることはそれほど多くない。そこで、本研究では心理療法における失敗要因とその防止策を探ることを目的に、臨床心理士485名を対象に失敗事例を収集し、その分析を行った。調査の回収率は、20.8%で、クライエントの平均年齢は、27.3歳±12.5歳であった。回答者の平均年齢は44.2歳±12.5歳で、臨床歴の平均は16.6年±11.2年であった。クライエントの主訴は、うつ病性障害が最も多く、続いて境界性人格障害、適応障害の順に多かった。失敗内容で最も多かったのは、セラピーの中断(ドロップアウト)で、全体の約6割を占めていた。失敗の要因は、「間違った介入」、「不適切なアセスメント」、「セラピー構造の崩れ」の順に多かった。中でも逆転移は重要な問題で、その多くはセラピストの未熟さに起因していると考えられる。失敗の防止策は、「適切な介入をする」、「関係部署との連携を図る」、「アセスメントをしっかりとする」の順に多く、いずれも基本的な事柄であった。セラピストは臨機応変に対応するために、常にスーパーヴィジョンやケースカンファレンスなどにより自らの臨床を振り返る必要があるだろう。So far, few studies have focused on the factors related to the failure of psychotherapy. We tried to collect case examples of therapeutic failures from 485 clinical psychologists to identify contributiong factors and to search for measures to prevent future failures. The collection rate was 20.8%, and the mean Ciage of clients was 27.3±12.5years. The mean age of the respondents was 44.2±12.5 years, and the mean years of professional experience of the clinical psychologiets who participated in the study was 16.6±11.2 years. The most common complaint of the clients was body symptom. Other complaints were, in order, interpersonal relationships, depressive state, and refusal to go to school. The most common diagnosis was depression, and others were, in order, borderline personality disorder and adjustment disorders. The most common therapeutic failure was dropping-out of therapy (about 60%), and the causes of the failures were, in order, "wrong intervention," "irrelevant assessment", and "unstable therapeutic structure." Counter transference is a particularly significant problem, which is thought to result from the immaturity of the therapist. The proposed measures for preventing future failures were, in order, "appropriate intervention," "cooperating with the related organization," and accurate assessment," all of which are basic principles in psychotherapy. It is recommended that a therapist should always reflect on his/her clinical style by means of supervision, case-conference and so on to take a flexible approach in each case.
著者
小杉 康 佐々木 亨 橋本 雄一 鈴木 正章 瀧川 渉 山崎 京美 富岡 直人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「噴火湾北岸縄文エコ・ミュージアム」の基本計画を作成し、小幌洞窟遺跡、有珠6遺跡の発掘調査による学術成果に基づいて、それぞれの遺跡をサテライトとして整備して、コア・ミュージアムを開設した。
著者
川村 静児 中村 卓史 安東 正樹 坪野 公夫 沼田 健司 瀕戸 直樹 高橋 龍一 長野 重夫 石川 毅彦 植田 憲一 武者 満 細川 瑞彦 佐藤 孝 佐藤 修一 苔山 圭以子 我妻 一博 青柳 巧介 阿久津 智忠 浅田 秀樹 麻生 洋一 新井 宏二 新谷 昌人 井岡 邦仁 池上 健 石徹白 晃治 市耒 淨興 伊藤 洋介 井上 開輝 戎崎 俊一 江里口 良治 大石 奈緒子 大河 正志 大橋 正健 大原 謙一 奥冨 聡 鎌ヶ迫 将悟 河島 信樹 神田 展行 雁津 克彦 木内 建太 桐原 裕之 工藤 秀明 國森 裕生 黒田 和明 郡和 範 古在 由秀 小嶌 康史 小林 史歩 西條 統之 阪上 雅昭 阪田 紫帆里 佐合 紀親 佐々木 節 柴田 大 真貝 寿明 杉山 直 宗宮 健太郎 祖谷 元 高野 忠 高橋 忠幸 高橋 弘毅 高橋 竜太郎 田越 秀行 田代 寛之 田中 貴浩 谷口 敬介 樽家 篤史 千葉 剛 辻川 信二 常定 芳基 徳成 正雄 内藤 勲夫 中尾 憲一 中川 憲保 中野 寛之 中村 康二 西澤 篤志 丹羽 佳人 野沢 超越 橋本 樹明 端山 和大 原田 知広 疋田 渉 姫本 宣朗 平林 久 平松 尚志 福崎 美津広 藤本 眞克 二間瀬 敏史 前田 恵一 松原 英雄 水澤 広美 蓑 泰志 宮川 治 三代木 伸二 向山 信治 森澤 理之 森脇 成典 柳 哲文 山崎 利孝 山元 一広 横山 順一 吉田 至順 吉野 泰造
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 (ISSN:13428349)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, 2006-03-04
著者
橋本 修 渡邊 慎也 松本 好太 KUMAR Pokharel Ramesh
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

無線通信環境の問題点を解決する設置環境側の対策手法の一つとして電波吸収体の適用が注目され、これまでにレイトレーシング法による解析や実験用ブースなどを使った実験的研究が広く行われ、種々の吸収体が提案されてきた。しかし、このような吸収体の提案に対して、1.無線LANを想定した環境で実際に無線LAN対応の電波吸収体を設置し、その通信環境の改善効果を実験で検討した例は極めて少ない。2.オフィス内の中央などで使用されるパーティションにおいても、電波が乱反射して影響を及ぼすといった恐れがあるが、パーティションなど室内に設置されたものに電波吸収機能を付加し、無線LANに対応した電波吸収体を検討した例は少ない。そこで、無線LAN環境改善をメインとし、下記の検討をそれぞれ行った。1.一般的な建物への適用を想定し、取り扱いが容易な一般内装建材を組み合わせた無線LAN対応の三層型電波吸収体を、小規模オフィスを模擬した空間に設置し、無線LAN実機を用いた伝搬実験を行った。この結果、まず壁1面への一般建材を用いた三層型吸収体の設置により、通信速度は設置前後で全ての測定点で向上し(平均40%)、吸収体設置による無線LAN通信速度の改善を確認した。2.パーティションに電波吸収機能を付加することで、無線LANで使用される周波数帯域に対応したパーティションタイプ電波吸収体について検討した。この結果、無線LANの使用周波数帯域である2.45GHzおよび5.2GHzにおいて、垂直入射で20dB以上、TE・TM両偏波および円偏波において、入射角度が5度から20度まで、15dB以上の吸収量が得られることを確認した。以上のことから、無線LAN用のパーティションタイプ電波吸収体の実現性を理論的かつ実験的に確認することができた。
著者
高橋 誠一 野間 晴雄 橋本 征治 平岡 昭利 西岡 尚也 筒井 由起乃 貝柄 徹 木庭 元晴
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、南海地域における歴史地理的実体を多角的に解明することを主目的としたものであった。従来の地理学分野からの琉球研究は、都市、集落、民俗、交易活動などを個別的に扱い、かつ沖縄や奄美の一地方を対象としたものが多かった。しかしこれらの個別事例の蓄積のみでは、東シナ海や南シナ海全域にわたる琉球の実体の把握が困難であったことは言うまでもない。そこで本研究においては、中国沿海州・台湾・ベトナム・フィリピン、沖縄・奄美における現地調査を実施し、都市・集落景観、伝統的地理学観の影響と変容、伝統的農作物栽培の伝播過程、物流と交易活動、食文化の比較、過去と現在の当該地域における地理学教育に見られる地域差などに関して、立体的な分析を行った。以上の研究によって、琉球が果たしてきた重層的な歴史的役割の実態を、かなりの程度まで明らかにできたと考える。これらの成果の一部は各研究者による個別論文のほかに、2007年に沖縄県立公文書館において開催した国際研究集会報告書などにおいても公刊済みである。また全体的な成果の一部を報告書としても提示した。しかし、本研究によって解明できた点は、当初の目的からすれば、やはりまだその一部を果たしたに過ぎないと言わざるを得ない。すなわち南海地域における歴史地理的諸事象の伝播過程やその変容については、かなり解明したとはいうものの、本研究の成果は単方向的な文化事象の伝播や影響の摘出に終始したとの反省がある。文化の交流や伝播は、長い歴史的過程の中では、多方向的に複雑に錯綜することによって新しい様相を生み出すということができる。それらを明らかにすることによって、本究で対象とした地域に関する理解を深化することを今後の課題としたい。
著者
齊木 崇人 小玉 祐一郎 宮代 隆司 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 土肥 博至 杉本 正美 上原 三知 佐藤 滋 中井 検裕 鎌田 誠史 橋本 大樹 長野 真紀
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

新しい住宅地開発プロジェクト、神戸・ガーデンシティ舞多聞の実践と、本研究の指針とした、E・ハワードの田園都市思想とガーデンシティ、それらの系譜にみるコミュニティのフィールドワークを同時進行的に行うことにより、将来の持続可能なコミュニティの創出・再生を目指す居住環境計画に対する、「特有価値を持つ空間デザインを生み出す手法」「コミュニティ形成を促す方策」「空間とコミュニティを持続・向上させるエリアマネジメントの仕組み」の指針を導き出した。
著者
山下 一也 松本 亥智江 橋本 道男
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

魚摂取を増やす介入(魚料理教室)がうつ状態に与える影響について検討した。対象者は高齢者22名で、月1回の料理教室の開催を1年半行った。75歳以下の群ではツング自己評価式抑うつ尺度37.4±6.1点(前)から31.7±7.7点(後)へと減少傾向がみられた(0.05<p<0.1)。75歳以上の群では変化は認められなかった。魚摂取は前期高齢者では、うつ状態の改善効果が期待できることが示唆された。
著者
しゃ 錦華 橋本 洋志
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 高齢者が楽しく行動すると共に自然に運動能力が維持・増進できることを目指し, トレーニング機能を備えた電動車の制御システムを設計することを目的に進めてきた.主に, 人間操作感覚のモデル化, 日本人高齢者の特徴を加味した最大ペダリング負荷の決定法, およびこれらに基づく負荷オートチューリング手法の開発, 路面摩擦などの影響に対する安全確保のための等価入力外乱手法の提案, 高性能電動車制御システムを目指すためのロバスト制御理論の開発などの面において, 様々な研究成果が得られた.
著者
橋本 直純 長谷川 好規 今泉 和良
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

肺線維症の線維化病変においてさまざまな細胞起源由来線維芽細胞の存在が証明された。その中で血管内皮間葉系細胞転換による線維化病変は低酸素状態をもたらしうる。遷延化低酸素状態は線維化微小環境として更なる線維化および肺構成細胞間葉系形質転換を介した線維芽細胞誘導をもたらすことを明らかにした。これらの知見は、線維化形成における誘導因子を解明することにつながり新たな治療標的を確立できると考えられた。
著者
土肥 敏博 北山 滋雄 熊谷 圭 橋本 亘 森田 克也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.315-326, 2002-11-01
被引用文献数
1 6

神経終末から放出されたノルエピネフリン(NE),ドパミン(DA)およびセロトニン(5-HT)は,それぞれに固有の細胞膜トランスポーター(NET,DAT,SERT)によりシナプス間隙から速やかに除去されて神経伝達が終息される.さらにこれらのモノアミンはシナプス小胞トランスポーター(VMAT)によりシナプス小胞内に輸送&middot;貯蔵され再利用される.NET,DAT,SERTはNa<sup>+</sup>,Cl<sup>&minus;</sup>依存性神経伝達物質トランスポーター遺伝子ファミリーに,VMATはH<sup>+</sup>依存性トランスポーター遺伝子ファミリーに属する.また選択的RNAスプライシングにより生じるアイソフォームが存在するものもある.NET,DAT,SERTは細胞膜を12回貫通し,細胞内にN末端とC末端が存在する分子構造を有すると予想される.近年,トランスポーターの発現は種々の調節機構により誘導性に制御されていると考えられるようになった.例えば,kinase/phosphataseの活性化によりその輸送活性あるいは発現が修飾され,トランスポータータンパク質あるいは相互作用するタンパク質のリン酸化による調節が考えられている.また,トランスポーターの発現は神経伝達物質それ自身の輸送活性に応じて調節されることやアンフェタミンなどの輸送基質あるいはコカインなどの取り込み阻害薬による薬物性にも調節されることが示唆されている.NET,DAT,SERTは抗うつ薬を始め種々の薬物の標的分子であることから,うつ病を始めとする様々な中枢神経疾患との関わりが調べられてきた.近年,遺伝子の解析からもその関連性が示唆されてきている.これまで抗うつ薬は必ずしも理論に基づき開発されたものばかりではなかったが,これらトランスポーターのcDNAを用いた発現系により,これまで検証できなかった多くの問題が分子レベルで詳細に検討されるようになった.その結果,多くの精神作用薬のプロフィールが明らかになったばかりでなく,より優れた,理論的に裏打ちされた多様な化学構造の新規治療薬の開発が可能となった.<br>