著者
中北 英一 田中 賢治 坪木 和久 大石 哲 中川 勝広 鈴木 善晴 大石 哲 坪木 和久 鈴木 賢士 川村 誠治 高橋 劭 田中 賢治 中川 勝弘 市川 温 杉本 聡一郎 鈴木 善晴 出世 ゆかり 大東 忠保 山口 弘誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害の軽減を目指して、次世代型偏波レーダーの降水量推定・降水予測への利用を目的に、偏波レーダーとビデオゾンデの同期集中観測を実施し、その結果、降水粒子の粒径と種類の推定手法を構築することに成功した。さらに、モデル予測への応用や現象の理解を深めることで降水量推定・降水予測の高度化を実現した。
著者
山田 礼子 木村 拓也 井ノ上 憲司 森 利枝 舘 昭 吉田 文 西郡 大 園月 勝博 相原 総一郎 沖 清豪 杉谷 祐美子 田中 正弘 安野 舞子 渡辺 達雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果は、(1)KCSS(韓国版大学生調査)を24年に実施し、日韓のデータ結合により分析、(2)日本では、平成25年まで、延べ866大学・短大から約14万人がJFS、JCSSとJJCSSに参加するなど標準的調査が根付いた。(3)24年には中国版CSSが試行され、25年には、上海市で中国版CSSの実施へと進展し日本発の標準的調査のアジアでの展開への基盤が形成されつつある。(4)2014年末までに、14万人のデータを格納し、参加大学が利用できるデータベースを開発、(5)日本のカレッジ・インパクト研究を下記で示す理論モデルにまとめたという5点が挙げられる。
著者
西原 克成 田中 順三 神田 重信 樺沢 洋 志村 則夫 松田 良一 丹下 剛 蔦 紀夫 梁井 皈
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

最終年度に当たる本年度は、脊椎動物の特徴である骨髄造血系の発生と鰓腸腸管呼吸器の肺呼吸への進化の相関性を人工骨髄器官を用いて骨髄造血巣を原始動物に発生させる実験進化学手法を応用して解明した。これにより骨髄造血系が主役として機能している免疫システムの本態を明らかにし、免疫病の発症の機序を解明し、予防法と治療法を樹立した。この結果、新しい免疫学の概念を樹立することが出来た。原始型の脊椎動物である二種類のサメ、ドチザメとネコザメ及びアホロートル・ゼノプスを陸上げする実験を行い、HLAの発生を解明した前年度に続いて、陸上げを境として白血球の性賞が革命的に変化し、同時に交感神経系と錐体路系が発生することを組織学的に世界に先駆けて検証する事が出来た。これによりこころと精神の発生までも明らかにすることが可能となり、免疫学とこころ・精神の関連性も解明された。本研究により原始型が高等動物の胎児に相当することを異種移植実験により完壁に検証し、ヘッケルの生命反復学説を分子生物学的に検証し、真性生命発生原則として提唱した。また陸上げ実験により、第二革命で鰓〓から発生する肺や胸腺、組織免疫系や交感神経系、臓器の栄養血管系のすべてがLamarckの用不用の法則にもとずいており、この法則が細胞遺伝子の引き金が物理化学的刺激によって引かれる化生(Metaplasia)で起こることを分子生物学的に検証した。これらの成果をBolognaで開かれた第13回国際シンポジウムCramics in Medicineで発表し多大な反響があった。脊椎動物を規定する骨の人工合成物質のヒドロキシアパタイト多孔体を用いて、生体力学刺激により進化で発生する高次組織の骨髄造血巣を、内骨格に軟骨しか持たないサメを用いて筋肉内に発生させる実験進化学手法により脊椎動物の3つの謎、すなわち進化の原因子、免疫システムの発生と骨髄造血系の発生原因のすべてが、重力作用への生命体の力学対応にあることを検証した。これにより新しい免疫病の治せる医学に立脚した正しい免疫学の体系が世界に先がけて樹立された。平成13年2月24日に日本免疫病治療研究会を発足させた。これらの業績を専門の雑誌の他に2001年度に7冊の本にまとめて出版した。年度内に研究を完成させることが出来たことは誠に喜ばしい限りである。
著者
山家 浩樹 林 譲 久留島 典子 鴨川 達夫 高橋 則英 高田 智和 馬場 基 大内 英範 耒代 誠仁 高橋 敏子 遠藤 基郎 山田 太造 渡辺 晃宏 小倉 慈司 高橋 典幸 井上 聰 谷 昭佳 川本 慎自 高山 さやか
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「ボーンデジタル進捗状況管理システム」を構築して、無秩序に生成されがちなデジタル撮影画像(ボーンデジタル)を、組織として一貫して管理・運用するシステムを確立し、歴史史料のデジタル画像を共有する基盤を整えた。さらに、標準化された仕様に適合しないデジタル画像を、メタデータとともに管理する一例として、ガラス乾板など古写真を取り上げ、「ガラス乾板情報管理ツール」を開発して、ガラス乾板の研究資源化および保存にむけた研究を行なった。あわせて、具体例をもとに、デジタル画像を主たるレコードとするデータベースの構造転換に向けた研究を推進した。
著者
中島 勇喜 林田 光祐 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

2004年12月に発生したインド洋大津波および2007年4月に発生したソロモン諸島での津波による被害地を調査し、津波に対する海岸林の被害軽減効果を検証した。その結果、海岸林による漂流物の移動の阻止、津波の波力の減殺、よじ登り・すがりつき効果が確認できた。さらに、被害軽減効果と海岸林の組成や構造は海岸地形に大きく依存していることから、地形を考慮した海岸林の保全が津波被害軽減に有効であることがわかった。
著者
池野 旬 島田 周平 荒木 茂 池上 甲一 半澤 和夫 児玉谷 史朗 上田 元 高根 務 武内 進一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

東南部アフリカの農村においては、多様な生業が同時並行的に展開されて、究極的な目的である安定的な食糧確保が目指されてきた。1980年代以降の国家の政治・経済・行政改革に伴うマクロ・レベルの社会経済変動に対して、生計戦略を変容させながら農村世帯は巧みに対応してきた。本研究では、主として農村での実態調査に基づき、多様な生計戦略と食糧確保の方策、ならびにそれらの背景にある規定要因について、実証的に分析した。成果の内容は、数冊の単行書(和文)、英文論文等として公表している。
著者
洞口 治夫 柳沼 寿 松島 茂 金 容度 近能 善範 天野 倫文
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

産業クラスターの知的高度化とグローバル化とについての実証的調査研究は、イノベーションの創出に関するアクターの多様性に関する研究として進化した。産業クラスターにおける企業間の協業と分業に焦点をあてた調査によって、組織間の共同研究と新たな組織の形成という課題が重要性を増していることが明らかになった。産業クラスターにおける現地調査は、名古屋、福岡・北九州、シリコンバレー、富山などで行った。産業集積に着目して調査を行うと、必ず「産業」の枠を超えた組織間関係の重要性を発見し、また、地域という距離的凝集性を超えたグローバル化したネットワークの存在を知ることになった。日本の産業クラスターで追求されている技術と経営の方向性は、「ものづくり」を基盤としながら、さらにイノベーションを求める姿勢であった。イノベーション創出への姿勢は、具体的には、複数の企業による共同特許の取得として定量的に把握できる。トヨタは、その共同特許の取得に最も熱心な企業であった。従来、イノベーションと産業集積との関係については、後者が前者の苗床となるという漠然とした研究しかなく、必ずしも明確なものではない。マーシャルのいう外部経済は、必ずしもイノベーションを誘発しない。シュンペーターのいう「新結合」は、経済社会における生産要素の定常状態を仮定した論理である。結合されるべき要素それ自体が「開発」される可能性を論理的に排除しているのだが、本研究においては、生産「要素」それ自体が、企業の研究所と大学、あるいは、研究開発機関との共同研究によって増加していることを明らかにした。また、シュンペーターは「新結合」を遂行するのは企業家の役割であるとしていたが、企業の研究開発担当者、大学の研究者、企業家、公設試験機関など、多様性をそなえたアクターが、既存の要素技術を組み合わせる作業に従事していることも明らかになった。
著者
青木 幸昌 佐々木 康人 平岡 真寛 名川 弘一 斎藤 英昭 花岡 一雄 中川 恵一 青木 幸昌 澤田 俊夫 小林 寛伊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

術中照射専用可動型電子線照射装置が完成した。電子線エネルギーは4,6,9,12MeVのいずれかを選択可能で、出力は最大10Gy/分、照射野は直径3-10cmが可能である。既存の手術場内に設置して、一人による装置の移動が可能である。米国、カルフォルニア大学において、臨床治験を開始した。同施設において、漏洩線量を測定した結果、1週間に12例、2400Gyを照射して、手術室周囲の最大検出線量は、室外のドア表面で72μシ-ベルトであった。従って、室内を放射線管理区域に設定することによって、追加遮蔽を要さないことが確認された。電子線エネルギーが大きくなるに従って、漏洩線量も増加することが示された。実際の運用は以下のようなものとなる。先ず、装置の保管室から手術場へ移送する。装置を規定の場所に設置し、ケーブル類をとりつけた後、QAに関するチェックを行う。この段階で放射線治療スタッフは一旦退出し、外科スタッフが装置にプラスティックキャップとドレープで装置を覆う。外科操作が完了すると、放射線治療スタッフとともに、使用アプリケータを選択する。手術台を照射装置まで移動させる。放射線スタッフがアプリケータを照射装置にドッキングさせ、照射線量と電子線エネルギーを決定する。スタッフは保管室に入り、モニタをテレビで観察しながら、約2分の照射を行う。この後、必要に応じて、手術操作を継続する。本装置を規制する法規として、科学技術庁関係の放射線障害防止法と厚生省関係の医療法について検討を行った結果、放射線障害防止法では装置の移動に関する問題はなく、放射線管理区域設定上の運用が問題となるのみと考えられるのに対して、医療法では、診断用高エネルギー放射線発生装置は決められた使用室で使用するとされており、今後の重大な検討項目となった。
著者
石川 義孝 宮澤 仁 竹ノ下 弘久 中谷 友樹 西原 純 千葉 立也 神谷 浩夫 杜 国慶 山本 健兒 高畑 幸 竹下 修子 片岡 博美 花岡 和聖 是川 夕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

わが国在住の外国人による人口減少国日本への具体的貢献の方法や程度は、彼らの国籍、在留資格などに応じて多様であるうえ、国内での地域差も大きい。しかも、外国人は多岐にわたる職業に従事しており、現代日本に対する彼らの貢献は必ずしも顕著とは言えない。また、外国人女性や国際結婚カップル女性による出生率は、日本人女性の出生率と同程度か、より低い水準にある。一部の地方自治体による地道な支援施策が注目される一方、国による社会統合策は不十分であり前進が望まれる。
著者
寺川 貴樹 石井 慶造 古本 祥三 菊池 洋平 松山 成男 酒見 泰寛 山崎 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

陽子線治療と腫瘍血流遮断剤を併用する新規治療法の開発を目的とし,マウス固形腫瘍による治療実験を実施した.本研究の高精度照射のために、マイクロパターンガス検出器による新規ビームモニターの開発に成功し治療実験に用いた。治療効果を[18F]FDGと[18F]FMISOを用いた超高分解能PETと、腫瘍増殖遅延測定から評価した。その結果、単回併用治療において、腫瘍増殖遅延に相加的効果があるだけでなく、腫瘍中心部の広範囲に細胞死が誘発されたが、腫瘍の辺縁部に低酸素状態を含む腫瘍細胞の生存領域が認められた。よって、単回治療後の2回目の併用治療が腫瘍細胞を完全に死滅されるために必要であることが示唆された。
著者
新津 洋司郎 佐藤 康史 瀧本 理修 加藤 淳二
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

組織線維症は現在全く治療法のない病態である。その責任細胞は星細胞であり、組織が傷害を受けると、それが活性化しコラーゲンを分泌するようになる。この分泌過程にはコラーゲンに特異的なシャペロン蛋白HSP47が補助的に関与する。本研究ではsiRNAHSP47を用いる事により活性化星細胞からのコラーゲン分泌を抑制する事を意図し、ラット肝星細胞での効果を検討したところ、明確に抑制効果が確認された。次いで星細胞がVitamin A(VA)を取り込み貯蔵するという性質を利用して、liposomeにVAを結合させその中に、siRNAHSP47(ラットではsiRNAgp46)を含ませてComplexを作製し、3種類(DMN,CCL4,DBL)の肝硬変ラットモデルでその抗線維活性を調べたところ、いづれのモデルにおいても明確な効果が見られた。また致死的なDMN モデルでは100%の生存率も確保できた。さらに同様な抗線維効果はDBTC膵炎ラットモデルに於いても確認された。本治療効果の機序としてはsiRNAHSP47によりコラーゲン分泌が抑制されると同時に組織中のコラゲナーゼ(一部は活性化星細胞からも分泌される)により既沈着のコラーゲンが分解される事によると考えられる。以上により本研究での開発された臓器線維症の治療法は、今後臨床への展開が多いに期待されるところである。
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
荻野 昌弘 小川 伸彦 脇田 健一 SEGURET Fran ABELES Marc JEUPY Henriー SEQURET Fron JEUDY Henri・
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、日本で近年高まりつつある文化財・博物館の社会的意味を問うことをめざして行った。三年間にわたる日本と欧米、特にフランスの調査に基づく。そのなかで得られた知見は多岐にわたるが、まず、ふれられなければならないのは、フランスと日本では、文化財という用語の定義自体がまったく異なるという点である。フランスで用いられるpatrimoineという用語は、社会のなかで見捨てられていたものを見直し、公共の財産として保存していこうとする意志が含意されている。遺産を通じて社会(とその歴史)を常に見直していこうというその性格から、フランスにおける文化財制度が、文化財保存のためだけではなく、フランス社会の秩序を維持する中核的な役割を担っていることがわかる。これに対して、日本では、「文化財」という言葉が用いられるとき、「見捨てられていたもの」の再評価と公共財化という観点は欠けている。そもそも日本では、伝統はモノの保存を通じてではなく、かつてあったはずのものを「かたち」に表すことで維持される(これを現在化の論理と呼ぶ)。したがって、モノ自体を保存することに関してはそれほど関心が高かったわけではなく、博物館制度の本格的な定着が遅れたのも、博物館を生みだした西欧近代の博物学的欲望を共有しなかったからなのである。ところで、戦後日本で、ようやくモノを通じた保存が本格的に論じられるようになったきっかけのひとつに、負の遺産と呼ばれる戦争遺産の保存問題がある(なお、負の遺産には公害、原子力事故の遺産なども含まれる)。それは、他の遺産とは異なり、展示品や展示方法に関してさまざまな議論を呼ぶ。研究者も例外ではなく、戦争遺産遺産に関しては、多様な解釈が可能である。本研究では、「視点の複合性」という立場にたち、ある特定の解釈だけを選択せず、多様な視点をいわば「共存」させる方法をとっている点が、方法論のうえでの新たな点である。
著者
藤目 ゆき 大越 愛子 南田 みどり 古沢 希代子 今岡 良子 津田 守 深尾 葉子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

四カ年を通して、北はモンゴルから南は東ティモールにいたる北東及び東南アジアの全域を射程として、現代女性史に関する調査・研究を実施した。日本国内はもとよりモンゴル、中国(大陸)、台湾、韓国、ベトナム、カンボジア、タイ、ビルマ、フィリピン、インドネシア、東ティモールにおいてフィールドワークを行い、資料を収集した。軍事主義が女性に与えて影響を明らかにするための研究計画に基づいて、戦争・軍事政権・外国軍隊の駐留のインパクトを調査した。第一に朝鮮戦争・ベトナム戦争、またベトナムとカンボジアの紛争、カンボジア内戦・フィリピン内戦といった戦争下における女性の経験、第二にタイ・ビルマ・インドネシア・台湾などの軍事政権が女性に与えた影響、第三に駐韓米軍・在日米軍・米比一時駐留協定・モンゴルにおけるPKO訓練基地をめぐる地域女性史に焦点をあてた。これらの調査を通して、戦争・軍事政権・外国軍隊の駐留といった状況が女性に対する性暴力を構造化させ、人身売買・性的搾取構造を確立させていった過程を明らかにした。また、このような軍事主義的・暴力的構造に対してアジアの女性たちがんなる受動的な被害者であったのではなく、果敢に抵抗し、人権と平和が尊重される秩序を構築するために力を発揮したことをも明らかにした。このような研究成果を発表するために研究代表者・研究分担者はそれぞれに機会あるごとに学会における発表、学術誌への投稿、図書の刊行などに取り組み、また研究組織として『アジア現代女性史』全十巻の刊行に取り組むとともに、年報『アジア現代女性史』を日本語版・英語版で創刊し、それぞれ四号まで発行した。
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.動物実験における酸化ストレス評価に関する研究生体内における酸化ストレスを評価する指標として、ビタミンC、E、脂質ヒドロペルオキシドを使い、各種病態におけるこれら指標の動態を検討した。その結果、老化においては脂質ヒドロペルオキシドが優れていることが、老化促進モデルマウスの実験から判明した。薬物による肝炎モデル動物ではビタミンCが最も鋭敏な指標であることが判明した。2.この50年間ビタミンCと同等の活性があるとされてきたデヒドロアスコルビン酸の生理活性をODSラット(ヒトと同様ビタミンCを体内で合成できない)を用いて検討した結果、デヒドロアスコルビン酸の生理活性はビタミンCの10%程度であることが判明した。同じ手法を用いて、天然物である2-O-(β-D-glucopyranosyl)ascorbic acidにビタミンC活性があることが判った。3.動脈硬化に関する研究動脈硬化の初発反応は低密度リポタンパク質(LDL)の酸化であると考えられている。しかしその化学的意味は全く判っていなかった。本研究において、LDLを酸化すると、LDLのアポリポタンパク質B-100(アポB)が分解すること、その反応性はビタミンEと同程度で血液中の他のタンパク質よりずっと高いことがわかった。さらに、酸化分解したアポBはヒト血液中に存在し、その量を定量すると、動脈硬化の診断に使われている臨床指標と良好な相関をした。アポB分解生成物の定量にはWestern blotを用いるため、27時間もの時間がかかり、実用には向かない。そこで実用的な方法を開発する目的で、LDLの酸化を評価する別の方法を検討した。その結果、酸化とともにLDLの粒子径が小さくなることを発見した。この発見は昔から、動脈硬化の危険因子とされるsmall dense LDLに酸化反応が関与することを初めて明らかにした点でも重要な発見である。
著者
安仁屋 政武 青木 賢人 榎本 浩之 安間 了 佐藤 和秀 中野 孝教 澤柿 教伸
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

エクスプロラドーレス氷河の前面にある大きなモレインの形成年代を推定すべく周辺で合計15点の^<14>Cによる年代測定試料を採取した。大きなモレインの6つの試料の年代は9250BPから820BPである。このデータからは形成年代に関して確定的なことは言えないが、モレインの堆積構造、試料の産出状況、植生、年輪などから14-17世紀頃の小氷期に形成されたと解釈した。氷河観測では、D-GPS静的測位を用いた氷河流動測定、 D-GPS動的測位を用いた氷河表面形態の測量、5MHzアイスレイダーによる氷厚測定を行った。流動は各期に氷河上の巨礫を反復測定し、末端部付近では50m、アイスフォール下部では140m程度の水平流動を得た。また、末端部付近では著しい上方向の流動があることが観測された。レイダーによる氷河末端付近の氷厚は260〜300mと推定された。氷河流域の年間水収支を算出し、それにより氷河の質量収支を推定した。2004年12月から末端付近に自動気象・水文観測ステーションを設置し、観測を継続している。また、夏季(2004年12月)、冬季(2005年8月)の双方で、氷河上の気象要素分布・表面熱収支・融解量分布などの観測を実施して、氷河融解の特性を明らかにした。2004年12月から2005年12月までの1年間における末端付近の平均気温は7.4℃、降水量は約3300mm、さらに氷河流出河川の比流出量は約6600mmであった。ペリート・モレーノ氷河において、中流部の表面高度測量および歪速度観測、カービングフロント付近の氷河流動の短期変動観測および写真測量、融解観測、氷河湖水位観測、中流部におけるGPS記録計による年間流動の観測、氷河脇山腹における長期写真記録および温度計測を行なった。近年上昇していた中流部の表面高度が2004年〜2005年で減少していた。この地域に2004-2005年の期間にストレイングリッドを設置してひずみや上昇速度を観測したが、大きな下降速度が計算された。また移動速度は0.8〜1.2m/dayの値が観測された。氷河末端部の測量からは、1.5m/dayを超える速度が多くの地点で観測された。
著者
ディビッド ウルフ 秋田 茂 泉川 泰博 岩下 明裕 遠藤 乾 松本 はる香 横手 慎二 エルドリッジ ロバート ロバート エルドリッジ 金 成浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史家と政治学者の連携のもと、冷戦期の北東アジア、特に日本側の役割と視点にたった多くの資料を収集・統合した。この4年の研究期間で研究メンバーは、ワークショップ、カンファレンスや様々な国際イベントにおいて、新たな資料と結論に基づく80回もの発表(半数が英語発表)を行い、約70もの論文・図書を執筆・刊行した。
著者
中北 英一 田中 賢治 戎 信宏 藤野 毅 開發 一郎 砂田 憲吾 陸 旻皎 立川 康人 深見 和彦 大手 信人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究プロジェクトは「琵琶湖流域の水・熱循環過程解明に向けた総合研究と衛星同期共同観測」を骨子としたオープンなプロジェクトであり,1989年の山梨大学工学部砂田憲吾による提唱をベースに,様々な方々,関係機関のサポートを頂戴しながら,手弁当による参加をベースに継続して続けられてきたものである.フリーな議論をベースにそのあり方を問い続けてきたプロジェクトでもある.その土台をベースに砂田憲吾をプロジェクトリーダーとして進んできた第1ステージが1994年に終了し,1995年からは,1)衛星リモートセンシングデータの地上検証 2)衛星データを用いた水文量抽出アルゴリズム/モデルの開発 3)地表面-大気系の水文循環過程の相互作用の解明 4)水文循環過程の時空間スケール効果の解明 を目的として,本科学研究費補助金をベースとした第2ステージを進めてきた.そこでは,これまでの地上,衛星,航空機による観測に加え,対象領域全体を表現するモデルとのタイアップを新たに目指してきた.その中で,どのスケールをベースに水文過程のアップスケーリングを図って行くべきなのかの議論を深めながら,20km×20kmまでのアップスケーリングをめざし第3ステージに橋渡しをするのが,わが国に根付いてきた琵琶湖プロジェクトのこの第2ステージの果たすべき役割である.'95共同観測では,様々なサポートにより上記第2ステージの目的を追求するのに何よりの航空機,飛行船を導入した大規模な観測態勢を敷くことができた.また,96年度から初の夏期観測をスタートすると共に,モデルとタイアップさせたより深い共同観測のあり方についての議論を行ってきた.成果としては,上記目的それぞれに関する各グループの成果報告,観測・モデルを組み合わせたスケール効果の解明と今後のあるべき共同観測態勢,研究グループ外部をも対象としたデータベースや観測・解析プロダクツを報告書として啓上している.
著者
長谷川 政美 加藤 真 湯浅 浩史 池谷 和信 安高 雄治 原 慶明 金子 明 宝来 聰 飯田 卓
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マダガスカル固有のいくつかの生物群について、その起源とこの島における多様化の様相を明らかにする分子系統学的研究を行った。(1)マダガスカル原猿類(レムール類)とアフリカ、アジアの原猿類との進化的な関係を、ミトコンドリアのゲノム解析から明らかにし、レムール類の起源に関して新しい仮説を提唱した。(2)テンレック類についても分子系統解析によって、その起源とマダガスカルでの多様化進化を明らかにする研究を行った。テンレックについては、前肢運動器官の比較解剖学的解析を行い、この島における適応戦略を探った。(3)マダガスカル固有のマダガスカルガエル科から、アデガエル、マントガエル、イロメガエル3属のミトコンドリア・ゲノムを解析し、この科がアオガエル科に近縁であることを示した。(4)マダガスカル固有のバオバブAdansonia属6種とアフリカ、オーストラリアのものとの進化的な関係を、葉緑体ゲノムの解析から明らかにした。マダガスカルの6つの植生において、植物の開花を探索し、それぞれの植物での訪花昆虫を調査した。いずれの場所でも、訪花昆虫としてマダガスカルミツバチが優占していたが、自然林ではPachymelus属などのマダガスカル固有のハナバチが観察された.このほか,鳥媒,蛾媒,甲虫媒なども観察された。マダガスカル特有の現象として、長舌のガガンボ類Elephantomyiaの送粉への関与が、さまざまな植物で観察された。Phyllanthus属4種で、ホソガによる絶対送粉共生が示唆された。マダガスカルの自然と人間の共生に関する基礎的知見の蓄積のため、同国の海藻のフロラとその利用に関する研究、及びマングローブ域に特異的に生育する藻類の生育分布と交雑実験による生殖的隔離に基づく系統地理学的解析を行った。マダガスカル南西部漁村の継続調査から、生態システムと文化システムの相互交渉を浮かび上がらせた。
著者
三枝 正彦 南條 正巳 鳥山 欽哉 木村 和彦 渡辺 肇
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

肥効調節型肥料の発明は肥料を種子や根と接触施用することを可能にした。この方法では土の介在なしに目的とした肥料成分を直接植物根に供給することが可能であり、肥料の利用効率を飛躍的に向上させ、作物の収量と品質を飛躍的に改善することを明らかにした。またこの方法で、不耕起移植栽培や、不耕起直播栽培、接触施肥シードテープ栽培、スティック肥料茶栽培など収量、品質を低下させることなく、環境負荷を低減する画期的農業システムを開発した。