著者
則行 敏生 奥道 恒夫 木村 厚雄 赤山 幸一 古賀 理恵 武島 幸男
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.25-30, 2004-02-20
被引用文献数
1

背景.悪性胸膜中皮腫は比較的稀な腫瘍であり,画像所見,胸水所見からの診断は困難なことが多い.好酸球性胸水を呈したgranulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF),granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生性悪性胸膜中皮腫の1例を報告する.症例.65歳,男性,2002年7月29日右胸背部痛のため当院入院となった.胸水,血液検査,胸部CT所見より好酸球性胸水(胸膜炎)と考えられ,ステロイド内服による診断的治療が施行されたが症状の進行を認めたため,9月17日胸腔鏡下胸膜生検を施行し,悪性胸膜中皮腫(二相型)と診断した.また,経過を通じて白血球,好酸球増多を認め,血清G-CSFは50pg/dl と高値であり,抗GM-CSF抗体,抗G-CSF抗体による免疫染色では腫瘍細胞のほとんどの細胞質と約5%の細胞質にそれぞれ陽性像を認めたことよりGM-CSFおよびG-CSF産生性腫瘍と診断した.腫瘍の進行,全身状態の悪化を認め,11月27日在院死となった.剖検で悪性胸膜中皮腫の壁側臓側胸膜,心外膜,横隔膜,腹膜,小腸,大腸への進展を認めた.結論.炎症反応陽性,治療抵抗性難活性胸水を認めた場合,悪性胸膜中皮腫も疑い早期に胸腔鏡下生検で確定診断を行うことが必要であると考えられた.
著者
北島 象司 古塚 孝 狩野 陽 KANOH Minami
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

この研究では2種類の実験を実施した。第1部門は短かい時間の中で生じる注意転換の研究で、第2部門はプライミングパラダイムを用いた記憶の研究である。第1部門の概要:2種類の刺激(数字と4エィーボード、NとC)を200および400ミリ秒で対にして提示(S_1とS_2)し、もう1対(S_3とS_4)をそのあとに提示した。被験者の課題は、Nの読み上げとCのパタンの異同判断であった。この時間内(200と400ミリ秒)の注意の変動を測定するために誘発電位を利用し各刺激に誘発された陰性波(N_1)の波高値を測定した。注意条件はターゲットの場所(時間的)が決まっている焦点注意(F)とターゲットの種類が決まっていて場所が未定の分割注意(D)の2条件とした。実験の結果判明したことは(1)F条件でもD条件でも健常者はターゲットに注意を集中しノンターゲットには注意しない。この注意配分の統制は200でも400ミリ秒でも可能である。(2)精神薄弱児と精神分裂病者群では、ターゲットに注意することは健常者と同じであるが、ノンターゲットにも注意を配分してしまう点で注意配分の統制が不良であること、(3)特に精神薄弱児では反応カテゴリー(NとかCの各前や異同)に含まれない『まえ』とか『うしろ』を手がかりにして注意配分をすることが困難であること、であった。第2部門の概要:日常見慣れた物体や動物の絵を対にして提示し、第2刺激の名称を発話するまでの反応時間(RT)と誘発電位のN400を測定した。対刺激相互間に意味上のつながりの強弱をパラメーターとして上記測度を分析した。判明した結果によれば、(1)意味つながりの最強な同一対の場合にRTが最小となり、(2)つながりが弱いほどRTが大となること、(3)精神薄弱児の場合でも同じ傾向があること、(4)ただしRTが健常者よりも長大となること、が示された。
著者
杉戸 真太 能島 暢呂 久世 益充 古本 吉倫 岩本 政巳 八嶋 厚
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

わが国の太平洋沖において頻繁に発生する海溝型巨大地震では、地震動の強度が非常に大きいことに加えて、その強震継続時間が極めて長くなることが知られている。構造物の地震動によるダメージが、その強度のみならず強い揺れの継続時間に大きく依存し、その影響の度合いが構造形式に依っても大きく異なることから、これらの影響を詳細に検討し、耐震設計に合理的に取り入れることを検討した。
著者
吉田 勝 奥平 敬元 有馬 真 古山 勝彦 加々美 寛雄 小山内 康人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1)平成11年度と12年度の2年間ににかけて、インド原生代変動帯を主題とし、UNESCO-IUGS-共催事業国際地質対比計画(IGCP)No.368プロジェクトの総括研究を行った。補助金によって蛍光X線分析装置と走査電子顕微鏡を購入し、後者には既存のEDXを装着し、研究地域の岩石・鉱物の分析的研究を行い、多くの成果を得た。インド楯状地及び関連地域の内いくつかの重要地域の野外研究を実施した。インドから科学者2名を招聘し、同位体年代分析あるいはインド原生代変動帯に関する全般的な情報提供を頂いた。また、インドの研究協力者らによってインド半島原生代変動帯の重要地域の地質研究成果のとりまとめが行われた。これらによってインド亜大陸の原生代変動帯に関する広く新しい知見が得られ、多くの国際集会に参加して研究発表、討詮及び研究のまとめを行った。2)これらの研究の結果、インドの原生代変動帯はメソ原生代のロディニア・東ゴンドワナの集合テクトニクスで重要な役割を演じたこと、ネオ原生代には基本的には再変動であったことが示された。最近Powellら(Gondwana Research 4,PP.736-737)などによって東ゴンドワナのネオ原生代集合モデルが提案されているが、我々の研究成果は、この新しいモデルはさらに精密な検討を要することを強く示唆している。3)これらの研究成果は研究分担者、協力者らによって国際誌等での学術論文公表135編・国際シンポジウムなどでの研究発表59題、国際誌特別号や学会メモアなど18冊の論文集冊などとして公表され、或いは印刷中である。4)本研究の成果報告書として「インドの原生代変動帯:IGCP-368の研究成果」(英文、GRG/GIGE Misc.Pub No.15)が発行された。本書は全376頁で、第1章:東ゴンドワナ研究の最近の進歩、2章:東ゴンドワナのテクトニクス、3章:インド半島のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、4章:アフリカと周辺地域のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、5章:南極のテクトニクスと岩石・6章:その他のゴンドワナ地域の地質、7章:IGCP-368プロジェクトの活動-国際シンポジウムとフィールドワークショップ-から成り、公表論文リスト、講演リスト、文部省提出書類ファイル一式が付録として付けられている。
著者
加古 敏之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では政策評価を活用して地方自冶体の農林水産行政の改革について考察することを課題としている。兵庫県農政環境部は、農林水産ビジョンに掲げるめざす姿の実現に向けて、多様な行動主体と目標を共有化し、知恵や力を出しあい、適切な役割分担のもとに、ともに取り組んできた。ビジョンで目指す姿がどれだけ実現できたかを毎年評価し、県民に公表するという方法で、ダイナミック・マネジメント・システムを循環させる取組を7年間にわたり実施してきた。こうした取組は徐々にではあるが成果をあげている。より大きな成果を上げるためには、県民、納税者の視点からアウトカム指標に基づく評価をより一層推進することが必要であろう。事務事業評価は、行政機関に既に存在する事務や事業を取り出し、その効果、効率について「事務・事業」の品質チェックをするという特徴をもっており、「戦略」レベルの見直しからは、まだ距離がある。愛知県東海市では、このような状況の打開策としてベンチマーク方式の政策評価を導入した。しかし、住民のニーズを反映した指標は行政の事業から遠いので、住民のニーズと行政の事業を結びつけるロジックモデルを検討し、その後の政策形成につなげていくことが課題といえる。オレゴン州ティラムク郡は、社会指標型ベンチマーキングを活用して、高い成果をあげている。行政からは独立しているティラムク未来委員会は、地域住民から多くの意見・情報を集めて地域の問題を明らかにし、戦略ビジョンとコミュニティ・アクション・プランを策定した。また、達成度評価の結果を公表してきた。ティラムク郡の取組が高い成果を上げている理由として、困難であってもあきらめずに改革への取組を継続する未来委員会の能力、政策評価の実施に関する多くのノウハウを持つオレゴン大学CPWの協力、自分たちの住む地域をよくしたいという地域住民の強い意思と民主主義を実践する住民の能力、を指摘できる。
著者
古屋 成人 土屋 健一 高木 正見
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本原産のイタドリが欧米諸国で大繁殖し、その被害拡大が深刻化している。そこで我が国のイタドリ群落に生息している植食性昆虫や植物病原菌類を利用した伝統的生物的防除法の開発を展開した。これまでに得られた研究成果に基づき、イタドリマダラキジラミの野外放飼実験が英国で開始された。しかしながら期待された防除効果は得られておらず、斑点病菌の撒布計画が立案されている。本研究では、斑点病についての生態学的知見を得る目的で、本病の発生状況、病原菌の接種条件の検討と分子追跡の手法の開発並びに発病に密接に関与した内生菌の探索などを行い、本病原菌を英国に導入させるための基盤を確立した
著者
岩本 晃明 佐藤 三佐子 古市 泰宏 野澤 資亜利
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当研究は当初「国際学術研究」として申請・採択されたものであり、国外研究協力者のMcGill大学・Gagnon教授との共同研究により、精子運動抑制因子(SPMl)およびその前駆体のSemenogelin(Sg)を中心として研究を行い以下の知見を得た。(1)従来より精漿蛋白は精子のcapacitationに関与すると言われており、ヒト精子capacitationに対するSgの影響を検討した。ヒト臍帯血に含まれる分子量3KDa以下の低分子成分(FCSu)を用いてcapadtationを誘発した。Sgの存在によりヒト精子のhyperactivationが抑制されるのが観察されたが、運動精子を用いたアッセイ系の不安定さや、精子自動分析機による解析が困難で、明らかな濃度依存性は見いだせなかった。つぎにacrosome reactionを指標とした検討で、Sgは濃度依存性にヒト精子のcapacitationを抑制することが判明した。Xantine oxidaseを用いたケミルミネッセンスの測定から、その作用機序はO_2^-の生成抑制であることが明らかになった。また、Sgは精製精子とインキュベーションすることで分解を受け、その分解産物も同様にヒト精子のcapacitationを抑制することをも見いだした。この結果より、SgおよびSPMlは精子のcapacitationに関与していることが示唆された。(2)男子不妊症および正常男性の一部にSg遺伝子の欠失が見られたことから、この変異型蛋白の機能を解析中である。また、DNA二次元電気泳動法によりSg遺伝子のSNP検索を行っているが、現在のところSNPは確認されていない。(3)組換え型Sg(r-Sg)蛋白の発現に成功し、多量の高純度・高活性r-Sg蛋白の精製が可能になった。このr-Sgを抗原として作製した抗体は、天然型SgやSPMlとも特異的に反応した。
著者
古家 賢一 片岡 章俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1089-1099, 2005-10-01
被引用文献数
8

マイクロホンから離れた位置の音声を収音する場合, 部屋の残響により収音された音声が劣化する. この問題に対して従来, MINT法では残響抑圧のための逆フィルタ計算に事前のインパルス応答の測定が必要であり, 実用的ではなかった. 本論文では, 事前のインパルス応答測定を必要としないチャネル間相関行列と白色化フィルタを用いて残響抑圧を行うSemi-blind-MINT法を提案する. 提案手法では, 最も音源に近いマイクロホンのみを既知とし, 室内インパルス応答の事前測定の代わりに各マイクロホン入力間の相関行列を用いて逆フィルタ計算を可能とする. また, 音源信号が有色信号である音声のため性能が低下する点を, 収音された音に音声の平均スペクトルの逆特性をもつ白色化フィルタを用いることにより改善を図った. 実際の部屋において実験を行い, その結果, 提案手法では7dBの残響抑圧効果が確認でき, また, 遅延和アレー法による残響抑圧に比べても4dBの改善効果があった.
著者
大山 喬史 森本 俊文 河野 正司 片山 芳文 野首 孝祠 古谷野 潔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

床義歯の形態,設計様式が口腔感覚に及ぼす影響を分析し,機能との関係を検討する目的で舌感,味覚,痛覚,咬合感覚等の生理学的データを収集し,さらにその神経筋機構について動物実験より分析した.まず口蓋部の床の形態が舌感に及ぼす影響について質問紙法で分析した結果,床辺縁の断面形態は粘膜より移行的に立ち上るナイフエッジ状,走行は左右対称な形態が感覚的に優れ,移行的な断面形態,斜めのラインを避けた左右対称な走行形態が口腔感覚に調和することが推察された.次に臼歯部咀嚼とうまみ溶出の関係を調べるために,利尻昆布のグルタミン酸量を測定し,咀嚼後の溶出量を算出した結果,臼歯部補綴によりグルタミン酸溶出量は増加する傾向が認められた.また金属床の味覚に対する影響を実験用口蓋床を用いて検査した結果,厚さが1.5mmのレジン床と金属床では味覚閾値に差は認められなかったが,0.5mmの金属床では,味覚閾値は有意に低い値を示し,義歯床の厚さや材質の違いが味覚に影響を与えることが示唆された.さらに義歯装着者の咀嚼効率の判定法として,食塊形成能の観点から嚥下に至るまでの咀嚼ストローク数をパラメータとすると有用なことが認められた.また無歯顎者の義歯装着が床下粘膜の圧痛閾値に与える影響を調べた結果,無歯顎者は健常有歯顎者より40%低く,無歯顎者の口蓋中央部の閾値は頬側歯槽粘膜より2〜300%高かったため,義歯装着により圧痛閾値は低下し,粘膜への機械的ストレスの関与が示唆された.さらにモルモット前歯部に咬合挙上板を装着して臼歯を挺出させると,歯ぎしり様の運動を繰り返し元の咬合高径に戻るが,三叉神経中脳路核を破壊し閉口筋の筋感覚を除外すると高径低下が有意に減少し,咬合高径決定に閉口筋の筋感覚受容器の関与が示唆された.以上より,口腔感覚と機能とは密接な関係にあり,床義歯の設計に際しては維持や機能力の分配だけでなく,感覚への配慮が機能向上に繋がることが示唆された.
著者
古川 哲也
出版者
清和大学短期大学部
雑誌
清和女子短期大学紀要 (ISSN:02873141)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-51, 2003-01-31
著者
中野 悦次 吉岡 俊昭 松田 稔 園田 孝夫 矢野 久雄 伊原 義博 黒田 秀也 岸本 知己 櫻井 勗 内田 欽也 児島 康行 中村 隆幸 清原 久和 佐川 史郎 関井 謙一郎 古武 敏彦 宇佐美 道之 三木 恒治 黒田 昌男 細木 茂 前田 修 友岡 義夫 吉村 一宏 水谷 修太郎 岩尾 典夫 三好 進 井上 彦八郎 本城 充 藤岡 秀樹 本多 正人 高羽 津 岡 聖次 松宮 清美 原 恒男 三宅 修 坂口 洋 竹山 政美 板谷 宏彬 宇都宮 正登 伊東 博 新 武三 永野 俊介 市川 靖二 野島 道生 長船 匡男 客野 宮治 山口 誓司 多田 安温
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.635-642, 1990-05

膀胱乳剤にフェルビナクのエチルエステルを封入させたLM-001静注剤を尿路結石による疼痛と膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対する有効性ならびに安全性について検討した.1)尿路結石による疼痛に対しては53例中49例に効果がみられた.有効例49例中41例までが本剤投与15分以内に効果が発現した.また26例において効果が24時間以上持続した.2)膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対しても29例中25例に効果がみられた.有効例25例中16例までが15分以内に効果発現した.また13例において効果が24時間以上持続した.3)副作用として血管痛,熱感,視力軽度低下,血圧の一時低下がみられたが,いずれもきわめて軽度で何ら処置することもなく短期間に消失した.また,3例に白血球増多,1例にA1-pの上昇がみられたが,その程度は軽度であり,すぐに正常化した.4)LM-001は尿路結石による疼痛の緩和と膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対し,速効性で高い有効率を示し,かつ作用時間が長いこと,また副作用がきわめて少ないことから優れた薬剤と評価し得たClinical effect of LM-001, a prostaglandin synthetic inhibitor developed from a drug delivery system, was evaluated in 54 patients with pain from urinary tract stones (stone pain) and 32 with vesical urgency after an operation on bladder or prostate. LM-001, felbinac ethyl incorporated in lipid microsphere, wes intravenously administered at the onset of stone pain or vesical urgency. Of 54 with stones and 32 with urgency, 53 and 29 were eligible for response, respectively. The symptoms improved or disappeared in some cases just after the administration and in the majority of patients within 15 minutes, in 49 of 53 patients with stone pain. Further, the effectiveness lasted over 24 hours in 26 of the 49 responding to this agent. On one hand, improvement or disappearance of vesical urgency was recognized in 25 of 29 patients, and the effectiveness was observed shortly after injection in 16 and lasted over 24 hours in 13 cases. Toxicities of this drug were investigated in 54 patients with stone pain and 32 with urinary urgency. Side effects consisted of pain at the injection site in 4, a slight fall of blood pressure in 1, slight visual disturbance in 1, body heat sensation in 1, leukocytosis in 3 and elevation of alkaline phosphatase in 1. These symptoms were transient and disappeared without use of any agent. LM-001 is concluded to be a useful drug for controlling stone pain and vesical urgency since an immediate effect, long durability and high response rates were obtained without severe side
著者
古旗 賢二
出版者
城西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カプサイシン含有のトウガラシ品種にカプシエイト生合成能があり、カプシエイト含有品種にカプサイシン生合成能があることを明らかにした。両品種は、カプサイシンあるいはカプシエイトの最終生合成酵素と推定されるアシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有しており、両品種で同一のものであった。カプサイシン、カプシエイトの最終合成酵素は同一であるが、前駆体としてバニリルアルコールが供給される場合に、カプシエイト蓄積が優位になることが示唆された。
著者
小林 太郎 武部 純 似内 秀樹 古川 良俊 石橋 寛二
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-15, 2006-01-10
被引用文献数
3 2

症例の概要: 患者は54歳の男性. 1992年6月に左側口底部の腫瘤に気づき, 岩手医科大学歯学部附属病院口腔外科を受診した. 同年9月に下顎左側口底癌の診断のもと, 腫瘍摘出術が施行された. その後, 左側下顎骨放射線性骨壊死と下顎骨骨折が認められたため, 1993年3月に左側下顎骨区域切除が行われた. 術後経過は良好であったが再建は行われず, 1996年2月に補綴的機能回復を目的として第二補綴科を受診した. 下顎の患側偏位により上顎との咬合接触関係が失われていたため, 下顎顎義歯装着後, 1997年11月に下顎顎義歯ならびに下顎歯列との咬合接触部を設けた口蓋床を製作し装着した. 2001年4月に下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床を再製作後, 患側への偏位の抑制と咀嚼機能の改善が認められている.<BR>考察: 下顎の偏位の防止と咀嚼機能の回復を目的として, 口蓋部の咬合接触域にパラタルランプを付与した口蓋床を装着した. その結果, 咀嚼筋のバランスを保つことができ, 下顎の患側への偏位の抑制を図ることができた. 咀嚼機能と構音機能の改善程度を評価したところ, 下顎顎義歯とこれに咬合接触する口蓋床の装着により摂取可能食品の増加が認められた. また, 狭まったドンダーズ空隙を広げることにより, 構音機能の改善も認められた.<BR>結論: 下顎骨非再建症例における下顎顎義歯と, これに咬合接触する口蓋床の装着は, 下顎の患側への偏位の抑制と咀嚼機能の回復に有効であることが示された.
著者
和田 肇 唐津 博 矢野 昌浩 本久 洋一 根本 到 萬井 隆令 西谷 敏 脇田 滋 野田 進 藤内 和公 名古 道功 古川 陽二 中窪 裕也 米津 孝司 有田 謙司 川口 美貴 奥田 香子 中内 哲 緒方 桂子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1980年代以降、とりわけ1990年代以降を中心に労働市場や雇用、立法政策あるいは労働法の変化の足跡をフォローし、今後のあり方について新たな編成原理を探求することを目的として企画された。この4年間で、研究代表者、研究分担者および連携研究者による単著を4冊刊行している(和田肇『人権保障と労働法』2008年、唐津博『労働契約と就業規則の法理論』2010年、藤内和公『ドイツの従業員代表制と法』2010年、西谷敏・根本到編『労働契約と法』2011年)。その他、100本を超える雑誌論文を発表し、研究グループによる学会報告が5回、国際シンポが5回(日独が2回、日韓が3回)行われている。とりわけ最終年度には、それまでの成果のまとめを中心に研究を遂行した。(a)労働者派遣法の体系的な研究を行い、2112年秋の書物の出版に向けて研究を積み重ねた。個別テーマは、労働者派遣法の制定・改正過程の分析、労働者派遣に関する判例・裁判例の分析、労働者派遣の基本問題の検討、比較法分析である。現段階で作業は約8割が終了した。(b)不当労働行為法上の使用者概念に関する最高裁判例が相次いで出されたこともあり、その検討を行った。これは、企業の組織変動・変更に伴う労働法の課題というテーマの一環をなしている。(c)労使関係の変化と労働法の課題というテーマに関わって、現在国会で議論されている国家公務員労働関係システムの変化に関する研究を行った。その成果は、労働法律旬報や法律時報において公表されている。特に後者は、この問題を網羅的・総合的に検討した数少ない研究の1つである。以上を通じての理論的な成果としては、(1)労働法の規制緩和政策が労働市場や雇用にもたらした影響について検討し、新たなセーフティネットの構築の方向性を示し、(2)非典型雇用政策について、労働者派遣を中心としてではあるが、平等・社会的包摂という視点からの対策を検討し、(3) 2007年制定の労働契約法の解釈問題と理論課題を明らかにし、(4)雇用平等法の新たな展開の道筋を付けた。当初予定していた研究について、相当程度の成果を出すことができた。
著者
古田 元夫 山影 進 佐藤 安信 田中 明彦 末廣 昭 池本 幸生 白石 昌也 栗原 浩英 レ ボ・リン グエン ズイ・ズン グエン タイン・ヴァン 伊藤 未帆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ベトナムをはじめとするASEAN新規加盟国の地域統合の動態を、東西回廊など、これら諸国を結ぶ自動車道路を実際に走行して観察しつつ、ベトナムのダナン、バンメトート、ラオスのビエンチャンおよび東京でワークショップを開催して、現地の行政担当者や研究者と意見を交換した。こうした取り組みを通じて、ベトナムの東南アジア研究所と研究者と、この地域統合の中でベトナムが果たしている役割、それと日本との関係について意見を交換し、その成果をベトナムと日本で報告書にまとめて刊行した。
著者
狩野 充徳 岸田 裕之 勝部 眞人 妹尾 好信 高永 茂 伊藤 奈保子 本多 博之 西別府 元日 中山 富廣 有元 伸子 竹広 文明 古瀬 清秀 フンク カロリン 三浦 正幸 久保田 啓一 野島 永 瀬崎 圭二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多くの伝承・伝説に包まれた世界遺産・厳島は、人間社会の傍らで、人びとの暮らしとともにあった。無文字時代には、原始的宗教の雰囲気を漂わせながら、サヌカイト・安山岩交易の舞台として。有史以後には、佐伯景弘らの創造した伝説を原点に、中世では信仰と瀬戸内海交通・交易の拠点として、近世では信仰と遊興の町として、近代では軍事施設をもつ信仰と観光の町としてあった。そして、それぞれの時代に、多くの伝承・伝説が再生産されていったのである。
著者
時野 隆至 古畑 智久
出版者
札幌医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

癌遺伝子の増幅や癌抑制遺伝子の欠失を伴う染色体変化はがん細胞の特徴である.本研究では短いゲノム断片を解析しゲノム上のDNAコピー数以上を示す領域を検出する方法としてデジタルゲノムスキャニング(DGS: Digital Genome Scanning)法を開発し,胃癌細胞株におけるゲノムコピー数異常の検出を試みた.胃癌細胞株ゲノムDNAを制限酵素処理した断片を回収し,連結したクローニングしたDNA断片の塩基配列を決定した.取得した塩基配列をヒトゲノム上にマップし,ゲノム上での断片の分布密度をもとにコピー数異常を示す領域を推定した.DGSで予測されたゲノム増幅領域に存在する癌遺伝子の候補については,次に,Southern blot, FISH, real-time RT-PCR, Western blot法などの分子生物学的手法で検証を行った.このDGS解析により,胃癌細胞株の第12番染色体短腕約0.5Mbのゲノム増幅が同定され,同領域に存在する癌遺伝子K-rasのゲノム増幅を確認した.K-ras領域のゲノム増幅は胃癌細胞株18種中4種で,また臨床胃悪性腫瘍50例中4例で検出された.また,K-rasの遺伝子増幅を示した胃癌細胞株ではMAP kinase(ERK1/2)の恒常的活性化が観察された.以上より,DGS法はがんを代表とするゲノムコピー数異常を呈する疾患の原因遺伝子探索において有効な手法となりうることを実証した.
著者
宇井 忠英 隅田 まり 大学合同観測班地質班 荒牧 重雄 大島 治 鎌田 桂子 小林 武彦 小屋口 剛博 佐藤 博明 中川 光弘 中田 節也 藤井 敏嗣 藤縄 明彦 古山 勝彦 三宅 康幸 横瀬 久芳 渡辺 一徳
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.45-52, 1993-07-01
被引用文献数
2

Small-scale pyroclastic flows due to the collapse of the lava dome have been frequently generated during the 1991-93 eruption of Unzen Volcano. We have recorded video footages which show the generation of pyroclastic flows during January-March 1992. Two types of phenomena have been observed : deformation of the lava dome due to flowage ; and a sudden discharge of gas and ash through fractures and peeling-off of rock fragments from the surface of cooling lava blocks. Pyroclastic flows were generated only in places on the lava dome where these precursory phenomena were frequently observed.